きよしこ
著者|重松清
出版|新潮文庫
ジャンル|小説 吃音
お話にできることは「ただ、そばにいる」ということだけだ、とぼくは思う。だからいつも、まだ会ったことのない誰かのそばにおいてもらえることを願って、お話を書いている。
この本に収められたお話を、君は自分のそばに置いてくれるだろうか。
―「まえがき」より
吃音をもつ少年「白石きよし」の物語です。
話したいことが相手に伝えられない、声が出ない。
少年の何ともやりきれない気持ち、悔しい気持ちがリアルに伝わってくる作品です。
この本はできれば、吃音のお子さんをお持ちのご両親に一番に読んでいただきたい。
そして次は学校の先生にも。
吃音の子供たちの気持ちがそのまま伝わってくる作品です。
彼らの気持ちに寄り添ってあげるためには、まずは彼らの気持ちを知ることが必須です。
この小説『きよしこ』はドラマ化され、2021年3月にNHK総合テレビで放送されました。
詳細は下記のリンクから確認できます。
このドラマで少年の役を演じている子役がとてもリアルな演技を見せてくれます。
吃音のことを知らない方もこれを見れば、吃音とはどのような症状か、吃音を抱えている人の気持ち、さらにはその両親の気持ちなどが胸の中にすぅっと入ってきます。
百聞は一見に如かずです、ぜひご覧あれ。
目次
きよしこ
クリスマスでよく歌われる「きよしこの夜」
これを「きよし この夜」ではなく、「きよしこ の夜」と勘違いした、少年のお話。
少年の名前は、「白石きよし」
幼い時からうまく言葉を発声出来ない吃音(きつおん)があります。
少年の苦手な言葉は「か行」「た行」。
少年の名前は「きよし」、
そう自分の名前が「か行」で始まるので名前が上手く言えない。
声が出ない、出たとしても、「きききき、き、よし」のようになる。
さらに少年を苦しめる事があります。
それは父親の仕事の関係で引っ越し、転校が多かった事。
転校が多い、つまり、その都度、新しい学校・新しいクラスメイトの前で自己紹介をしないといけない。
何度も練習をするけど、本番では自己紹介で失敗してしまう。
同じクラスの男の子にもからかわれてしまう。
友達と話をしていても、話したいことは話せずただ笑顔でうなずいているだけ、本当に話したいことは常に胸の中にしまい込んでしまう。
少年は小さいころあることがきっかけで吃音の症状が出始めた。
とても悲しい思い出で、心の底にしまっていた。
あるクリスマスイブのよる。
少年は「きよしこ」とであう。
「きよしこ」は悲しい思い出の他に、忘れていた大切な思い出も、思い出させてくれます。
おススメのお話
ドラマでは紹介できなかったストーリーもあります。
ぜひとも読んでいただきたい、オススメのお話もあります。
■ 乗り換え案内
夏休みに「吃音矯正プログラム」に通うことになった少年。
少年はそこで、「加藤達也」君と知り合います。
加藤君は少年よりも吃音が重く、すべての音で吃るため、言葉は発せずただ少年にちょっかいをかけてきます。
そのため、最初は少年と加藤くんの喧嘩をした話から始まります・・・が、
この先のお話は是非とも読んでみて下さい。
同じ吃音を抱える少年でしか加藤君の抱える苦しみに寄り添うことができなかった。
少年の心の成長と優しさを感じることができるお話です。
■ どんぐりのココロ
引っ越し先の学校で、うまく友達を作れなかった少年は、一人近所の神社で、どんぐりを野球のボールに見立てて練習をしていました。
ある日そこで、少年は昼間から酒を飲む明らかに怪しげな謎のおっちゃんと出会います。
この出会いが、少年の気持ちを変えるきっかけになります。
おちゃんは少年と野球の練習をしながら、少年が吃音を持っていることに気付きます。
その時に少年に言った言葉がこれです。
「ええやんけ」
吃っていてもええ。
その言葉が少年の求めていた言葉なのかもしれません。
■ 北風ぴゅう太
ドラマでは紹介できなかったお話。
ぼくの一押しがこの「北風ぴゅう太」です。
六年生、卒業式の前日に行われる「お別れ会」、石橋先生の提案で少年のクラスは劇をやることになった。
少年は作文が得意だったため、劇の書き手に指名された。
先生はクラス全員にセリフのあるの劇を作ってほしいと少年にお願いした。
少年のクラスは37人いる。
全員にセリフのある劇を作るのはなかなか難しい作業だったが、「マッチ売りの少女」をもとに話を作ることにした。
少女がマッチをする度に、学校の思い出が、思い浮かぶというもの。
少年は吃音と葛藤しながらクラスみんなの意見を聞き、そして指揮をとり、劇を完成させていきます。
この劇の提案者である石橋先生には「ゆかりちゃん」という娘がいる。
ゆかりちゃんは生まれつき心臓が悪く、赤ん坊のころから何度も手術をしていて、学校にはほとんど通っていない。
先生はときどき学校を休む。
ゆかりちゃんの具合が思わしくないのだ。
そして、劇が完成に近づいてきたとき、石橋先生がしばらく学校を休むことになるが・・・
この先はぜひ小説を読んでみて下さい。
この話で、ドラマが一つ完成できるような内容です。
■ 東京
少年の決意が伝わる話です。
少年の向かう道は茨(いばら)の道です。
しかし、吃音から逃げることなく、自分の夢に向かって少年は歩みだすのです。
「簡単に歩ける道と、簡単には歩けない困難な道があったとします。
この2つの道があった場合、誰もが簡単に歩ける道を選ぶはずです。
しかし、困難な道の先に素晴らしいものがあるならば、そちらを歩いてはみませんか。」
これは、この本とは関係ない僕の好きな(とある企業向けの研修会で聞いた)言葉です。
少年は茨の道へ進みます。
それはとても困難な道です。
でも、その先に少年の目指す夢が待っているのです。
ちなみに、この話は少年と親しくする女子学生が登場します。
ドラマでは少年との関係は詳細には描かれていませんが、小説ではこの女子学生との関係がちゃんと書かれています。気になる方はぜひ読んでみて下さい。
関連書籍
『吃音 伝えられないもどかしさ』近藤雄生
『きよしこ』の著者 重松清さんがこの『吃音 伝えられないもどかしさ』の解説を書いています。この解説の中にも「きよしこ」が出てきます。このページで紹介している書籍『きよしこ』の少年がまだ小さいころ、クリスマスイヴの夜に「きよしこ」と出会います。少年にとっての「きよしこ」の存在。この場面を読んだ後で『吃音 伝えられないもどかしさ』を読んでみてください。
この『吃音 伝えられないもどかしさ』を最後まで読んでから、重松清さんの解説を読むと、なるほどと深くうなづけるはずです。
吃音で悩んでいる皆さんにとっての「きよしこ」も見つかるはずです。
きみの友だち
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とんび
青い鳥
くちぶえ番長
その日のまえに
星のかけら
ビタミンF
旧友再会
せんせい。
めだか、太平洋を往け
ナイフ
エイジ
流星ワゴン
卒業
赤ヘル1975
木曜日の子ども
一人っ子同盟
ゼツメツ少年
十字架
みぞれ
かぞえきれない星の、その次の星
半パン・デイズ
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ポニーテール
かあちゃん
おじいちゃんの大切な一日
さすらい猫ノアの伝説
ブランケット・キャッツ
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たんぽぽ団地のひみつ
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どんまい
また次の春へ
送り火
ぼくはこう生きている君はどうか
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娘に語るお父さんの歴史
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