月人壮士(つきひとおとこ)
著者 / 澤田瞳子
出版 / 中公文庫
ジャンル / 歴史小説、螺旋プロジェクト
ページ数 /350ページ程度
オススメしたい人
≫ 歴史小説が好き
≫ 難しい話に挑戦したい
≫ 螺旋プロジェクト全部読みたい人
目次
あらすじ
天平勝宝八歳(756年)、その日、太上天皇・首(おびと)(聖武)が亡くなった。
首の娘・安倍(あべ)は女帝であるため中継ぎに過ぎず、後を継ぐ皇太子は首の残した遺詔(いしょう)によって決めることとなった。
幸いに首は遺詔を5日前に残していた。
遺詔の内容は
『皇太子には従四位上(じゅしいのじょう)・道祖王(ふなどおう)を立つるべし』とあった。
しかし、道祖王の名が上がったことに納得できない者もいた。
その中に、左大臣を辞したばかりの橘諸兄(たちばなのもろえ)がいる。
理由は、道祖王が政(まつりごと)において、目立った活躍を果たせていない、人柄はいいが帝位にふさわしいとは思いがたいとのこと。
そこで、首太上天皇の末期の遺詔を、中臣継麻呂(なかとみのつぐまろ)と内道場で看病禅師を務める道鏡(どうきょう)に探させる。
先の遺詔ではなく首太上天皇の本心が綴られた遺詔を・・・
はたしてそのような遺詔は存在するのか・・・
橘諸兄より依頼を受けた継麻呂と道鏡は、首を知る人物を訪ね歩く。
昼夜を問わず枕頭(ちんとう)に詰めていた掌侍(しょうじ)の円方女王(まとかたのおおきみ)、皇后の光明子(こうみょうし)、道祖王の兄・塩焼王(しおやきおう)など
調べを進めるうちに見えてくるのは首の真実の姿であった。
ここがオススメ
■ 海族と山族の争い
天皇家が山族、藤原家が海族ということで螺旋プロジェクトの対立を描いていますが・・・
読んでいくと、ふと疑問に思うところがあります。
山族と海族の対立がそこまで激しくないのです。
そう思えるのも仕方ないのですが、あるところで確実にこの二つの一族の対立は起こっています。
それは他の作品にはあまりない形で!
しかも物語の根幹となるところです!
ヒントは『首(おびと)』に流れる血。
■ 一人語り形式での会話
この会話形式のため、首の遺詔を探す中臣継麻呂と道鏡禅師がどのような人物かがあまり伺い知ることができないのが少し残念なところ・・・
しかし、この物語の重要なポイントは首がどのような人物だったかというとこ!
なので、物語の流れとしては、余分な情報がなくスッキリとした作りとなっています。
それと、一人語り形式のため、尋ねる相手が皆ツンデレな対応に見えるところが、読んでいて段々とクセになってきます。
■ 天皇家・藤原家略系図
時代的にどうしても家系や人間関係が複雑になってしまう。名前を聞いても男か女かも判断しづらい、そんな時代の小説なので必然的に読むのが難しくなってしまいます。
本書の始めのとこに『天皇家・藤原家略系図』があり、このページを見ながら本書を読み進めると、物語の流れが飛躍的にわかりやすくなります。
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